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千葉家庭裁判所 平成元年(少)3415号 決定 1989年9月21日

主文

1  本件から殺人、殺人未遂保護事件を分離する。

2  殺人、殺人未遂保護事件について少年を保護処分に付さない。

理由

本件差戻前の抗告裁判所である東京高等裁判所が平成元年9月18日になした同裁判所平成元年(く)第158号抗告事件の決定の決定書理由欄に記載のとおり、少年の別紙送致事実記載の殺人、殺人未遂罪については、その故意及び実行行為までは認定できるものの、これを刑法36条1項所定の正当防衛に該当する行為として罪の成立を否定すべきであるから、残余の罪についての審判の公正を期すべく、職権をもって本件から同殺人、殺人未遂罪にかかる部分を分離した上、同罪について少年を保護処分に付さないこととする。

よって、刑事訴訟規則210条を類推適用した上、少年法23条2項により、主文のとおり決定する。

(裁判官 夏井高人)

別紙

1 平成元年6月19日付け送致事実

少年は、不良グループ「×○」の構成員であるが、事前に暴走族グループの対立抗争があることの風評を聞きつけ、同対立抗争を見物しようと浦安市○○×丁目××番××号○○駐車場前を通行中のところ、右駐車場に蝟集していた50名位の集団にやにわに鉄パイプ等で襲撃された為、同所から逃走したが、浦安市○○×丁目××番先○○マンション前駐車場において追跡して来た数名の者に追いつかれた事で憤激しやにわにその者等を殺害せんと企て平成元年5月28日午前0時30分ころ、右同所において同人の後方に追いついたB(当17歳)に対し振り向きざまに所携のナイフにより右手で左上腹部を突き刺し、右Bを心房に達する左上肺部刺切創による失血により死亡するに至らしめて殺害したものである。

2 平成元年6月17日付け送致事実

少年は、不良グループ「×○」の構成員であるが、事前に暴走族グループの対立抗争があることの風評を聞きつけ更に応援要請をうけたが、対立抗争集団等に対し自己集団の存在を示し格好をつける為、右腰にナイフを所持したうえ仲間7名と共にオートバイに分乗し浦安市○○×丁目××番××号○○駐車場に赴いたところ、同駐車場に蝟集していた鉄パイプ等を所持した50名位の集団に取り囲まれ暴行を受けたため同所から逃走し、浦安市○○×丁目××番先○○マンション前駐車場付近において追跡して来た数名の者に追いつかれた事で憤激し、やにわにその者等を殺害せんと決意し平成元年5月28日午前0時30分ころ、右同所において追いつき同人の両肩をつかんだA(当21歳)に対し振り向きざまに所携のナイフにより右手で左側腰部を突き刺したが、更に他の者に追われた為、同人に加療約1ヶ月を要する左側腹部刺創、左腎裂傷結陽破裂の傷害を負わせたにとどまり、殺害の目的を遂げなかったものである。

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